しし肉料理王国TOP

　美作人（ミマサカジン）が大のシシ肉好きだという事実は、公には殆ど知られていない。最近は少し「道の駅」や「山の駅」などの市場ができ、シシ肉も観光客の間に出回るようになったが、この地で食される猪の頭数は、統計には出ないが相当数だ。美作は、標高の低い山々が連なる中国山脈まさにその場所だ。気候は比較的温暖であり、その両条件を揃えた山々はきのこ類やどんぐり等の木の実など動物達の食材の宝庫であり、猪だけでなく、熊、鹿、狸、狐などの獣が今でも温々と生息している。なかでも猪は村に下りて農作物を荒らすので猟師達の標的になる。撃たれた猪は猟師の家で猟師や奥様方の手でさばかれる。さばかれた肉はその日の内に親戚や近所の人に配られ、その日のおかずにそのまま放り込まれる。「味噌汁」「焼きそば」「お好み焼き」「素焼き」。様々な方法で調理され地元民の腹に入る。都会では滅多に食べない猪だが、美作では余りにもポピュラーな食材と言える。最近その猪が『美容』や『健康』にいいと騒がれるようになった。江戸時代にも猪は山鯨と言われ薬食として重宝された時代があったが、平穏で女性の強い時代が来ると、このようなキーワードが浮上するのかも知れない。猪肉に多く含まれる『スレオニン』は9種の必須アミノ酸の中で唯一脂肪の蓄積を抑える役割を担う。その量は牛肉の二倍、豚肉なら三倍とも言われるので相当の量だ。また、脂分に含まれるコラーゲンには組織細胞を強化し、肌に弾力を与え若さを保ち、老化防止の効果がある。猪肉は高たんぱく、低脂肪、低カロリーと美には非常に都合のよい食材だ。こうして見ると美作の国は、温泉に食材、名前の通り美を作るものが多いという印象を受ける。